皆さんは、Chromebookというパソコンをご存知ですか?
ほとんどの方は、名前はどこかで聞いたことがあるが、どんなパソコンなのかを知らないというレベルだと思います。
私自身もこれまで全く触れてこなかったのですが、パソコン教室として、Chromebookのことを知っておいたほうがいいだろうと考えて、2ヶ月ほど前になりますが、Chromebookを購入してみました。
現在販売されているChromebookのメーカーは、「ASUS」、「Acer」、「Lenovo」、「HP」などになります。
一般的には、WindowsやMacなどに比べると、全体的に低価格なものが多く、CPUは「Celeron プロセッサー」などの安いCPUで、SSDやeMMCなどのストレージの容量も小さいものが多いという傾向です。
Chromebookの用途は、小学校や中学校での使用を考えて、できるだけ低価格に抑えているのだろうという印象を持ちます。
私が購入したChromebookは、HPの製品で、Amazon限定モデルの34800円という価格のものでした。(現在はAmazonでは売り切れ状態になっているようです。)
このモデルは、もともと「HP Chromebook x360 」というモデルを、HPが改良して学校向けに販売したものではないかと思われます。
最近、テレビで八王子の小学校などで使われていることが紹介されて、日本でもかなり普及してきている感じを受けました。
一方、世界的に見ても、昨年の新型コロナの流行により、企業などでテレワークが普及してくる中で、Chromebookを使って会社のパソコンにリモートで接続して仕事を行うという人も増えてきているそうです。
2020年度のChromebookの売り上げ台数は、AppleのMacパソコンの売り上げ台数を上回ったらしく、急激にシェアを伸ばしていると言われています。
この理由としては、以下のことが考えられます。
- Chromebookは何より価格が安い
- Androidのアプリを使用できる
- Googleのすべてのサービスを使用できる
- パソコンの起動が、びっくりするほど速い
- パソコンの終了が、びっくりするほど速い
- パソコンの処理がスムーズで速い
- ウイルス対策ソフトが組み込まれており、別途購入する必要がない
- ウイルスに感染する危険性がほとんどない
- アップデートの回数が少ない
- USBやSDカードが使える
- テレワークに必要なカメラ、マイク、スピーカーを標準装備している
このような利点があるChromebookですが、そのメリットだけではなくて、デメリットも十分に知っておく必要があると思います。
そういうことで、私自身で体験して感じた部分について、ご紹介したいと思います。
1.なぜChromebookは安いのか?
私が購入したChromebookのスペックを紹介しておきます。
メーカー:HP
シリーズ:14a
重量:1.33kg
ディスプレイサイズ:14インチ
タッチディスプレイ:あり
解像度:1920 × 1080
CPU:Intel Celeron N4020
メモリ:4GB
ストレージ:64GB(eMMC フラッシュメモリ)
無線:802.11a/b/g/n/ac, ブルートゥース
有線LANポート:なし
USBポート数:3
SDカードスロット:1(Micro SD)
カメラ、マイク、スピーカー:あり
光学ドライブ:なし
バッテリ駆動時間:11時間
ウイルス対策機能:2026年まで有効
価格:34,800円(価格は変動します)
基本的には、パソコンの価格は、CPU、メモリ、ストレージなどによって決まりますが、Chromebookは、それらを考えても安いという印象を受けます。
恐らく、WindowsパソコンにあるWindows OSの料金や、Officeソフトの料金、ウイルス対策ソフトの料金などが不要であるという点が大きいのだと思います。
さらに、ノートパソコンで、タッチディスプレイが使えるという点を考えると、むしろAndroidのタブレット的であると言えるのかもしれません。
2.Chromebookは、Androidタブレットではない!
AppleのiPadは、iPhoneと全くOSを持つタブレットで、使い勝手もほとんど同じ感じです。
つまり、iPadは大きくなったiPhoneと考えても差し支えありません。
一方で、iPadには、iPad Proというモデルがあります。これは、キーボードを接続できるiPadということになり、見た目上はChromebookと似ている部分もあると思います。
一方、Chromebookですが、一見するとAndroidのアプリが使えるということで、これはAndroidタブレットなのか?と思ってしまう部分もあるのですが、根本的にAndroidと異なる部分があることがわかりました。
それは、ChromebookのOSはChrome OSであり、Android OSではないということです。
最も大きな違いは、USB端子を持っている点です。このUSB端子には、一般のマウスや、USBメモリなどが接続でき、自動で認識されます。
このUSBの存在により、WindowsやMacとの間でデータを移動することが可能になります。
もう1つの大きな特徴は、ストレージに関することです。
Chromebookのストレージは、フラッシュメモリやSSDのようなものが多いのですが、これらはローカルのメモリとなります。このメモリは、Androidアプリを入れることで消費されますので、残りの領域に作成したファイルなどを保存するという形になっています。
一方、Googleドライブというクラウドストレージが、標準で組み込まれており、これらを使用することで、WindowsパソコンやMacとの間でデータを相互に移動することができます。
さらに、SDカードを差し込めるようになっており、こちらもストレージとして使用できます。本体のメモリ容量は少なくても、大容量のSDカードをセットすることで、ストレージの不足を補うことができるようになっています。
3.Chromebookの隠された機能とは?
Chromebookを購入して最も驚いたのは、Linux開発環境というものがあることでした。
このLinux環境を有効にするだけで、Linux OSとして動くこともでき、Linuxのアプリをインストールして使用することができるようになります。
つまり、Chrome OSとは全く別のLinux OSがパソコンの中に同居しているといった状態になるということです。
この同居状態は、きっちり分けられて存在しているわけではなくて、混在しているような状態で動いており、その部分がとても不思議に感じられます。
Linux開発環境は、ストレージの中の何GBを使用するかを定義することができ、それはいつでも容量を変更することができます。
さらに、Chrome OS上のフォルダをLinux側で共有する機能があり、SDカード上に作成したフォルダを共有フォルダとすることで、Linux側のストレージを大幅に増やすことができます。
今後、プログラム等を本格的に勉強したいという人にとって、Linux環境があるということは、とてもありがたいことです。
私の場合は、Pythonの勉強をするためにLinux版のAnacondaを入れたり、画像編集ソフトのGIMPを入れたり、テキストエディタとしてVisual Studio CodeやAtomなどをインストールすることができました。
通常のAndroidアプリだけでも、数えきれないほどのアプリがあるのですが、Linux用のアプリも導入できるものがあるということで、多種多様のアプリを使用することができるようになっています。
4.Chromebookのデメリットとは?
Chromebookは、Windowsのように絶えずアップデートに苦しむこともなく、ウイルスの脅威にも遭遇することがなく、起動や終了の待ち時間もなく、WindowsやAppleの製品のように、絶えずIDやパスワードを要求されることもありません。
唯一、起動時にGoogleアカウントのパスワードを入れるくらいです。
こんな便利なChromebookですが、仕事に使うという上ではデメリットもあります。
それは、Word、Excel、Powerpointといったビジネスで使用するソフトがインストールできないということです。
もちろん、アプリとしての簡易的なWord、Excel、Powerpointはインストールできますが、本格的なソフトではないので、とても貧弱です。
また、Windowsにインストールできるフリーソフトなどもインストールできませんので、代替のアプリを探す必要があります。
つまり、Windowsパソコンの代替として使うということを考えると、それは無理であるということになります。
恐らく、Chromebookの使い方としては、会社組織として使用するということよりも、個人がインターネットと接続して、Googleの様々なサービスを使用するといった使い方がベストなのだろうと思います。
また、安定したOSで、ウイルス感染の危険性がなく、動きも速く、アップデートもほとんどないということで、教育現場で生徒が使用するといった場合に最も適しているパソコンだと思われます。
Googleとしては、Googleドライブ上で使える「ドキュメント」「スプレッドシート」「スライド」といったOfficeソフトの代わりに使ってほしいと考えているのではないかと思いますが、使いやすさはOfficeに慣れた人にはちょっと使いにくいと思います。
一方で、私が感じたChromebookの最大の弱点は、プリンタとの接続です。キヤノンやエプソンなどのプリンタに簡単に接続できるわけではなく、接続設定に関してはまだまだ遅れていると思いました。
今後、キヤノンやエプソンなどが、Chromebook専用のプリンタ機種別ドライバを開発していただくことを期待しています。
5.Googleが考えるChromebookの未来とは?
Googleは、Android OSを無料で提供することで、スマホの世界で大きなシェアを得ることができています。
さらに、AppleがiOSを使って、iPhone – Macという連携を築いたように、Googleは、Android – Chromebookという連携を考えているように思われます。
しかし、Googleが考えているのは、Androidとの連携ということよりも、Chromeブラウザを使った、Googleサービスとの連携をより強固にしてゆくのではないかと思われます。
Googleには、Googleのプログラマが開発した様々なサービスがあり、それらはローカルのアプリではなく、ネットとつながった世界でのツールという意味合いがあります。
Chromeブラウザは、ブラウザという機能を越えて、それ自体がアプリを動かす本体になってきていると思います。
それこそが、Chrome OSが目指しているものかもしれません。
一番大切なことは、パソコンというものは、ハードウェアよりも、その上で動くアプリによって選ばれているということです。
Chromebookならではアプリが今後出てくるかどうかが、Chromebookの未来を左右するのではないかと思います。
6.Chromebookを買いたいと思っている人へ
日本では、Chromebookはまだまだメジャーな存在ではありませんし、ネット上でChromebookを検索しても、十分な情報があるわけではありません。
ただ、Windowsパソコンしか使ったことがない方、Macのパソコンしか使ったことがない方は、Chrome OSというものの考え方に是非触れていただきたいと思います。
OSというのは、作った人の考え方を表しています。
ですから、いろんな考え方を学ぶという点で、新しいOSに触れることはとても有意義だと思います。
Chromebookも多くの人が使う中で、洗練されてくると思いますし、使いやすく改良されてくると思います。
最初から価格が高い機種を買うのではなくて、低価格なものを購入して、いろんな可能性を試してみるのがいいのではないかと思います。
AmazonでChromebookを検索すると、沢山出てきますので、いろいろと調べてみてください。