家でのインターネット接続は、コロナ下でテレワークをする人にとっては重要になっています。
すでに家にインターネット接続を持っている方が多いと思いますが、様々な業者からインターネット接続のチラシが入ってきたり、突然電話で勧誘があったりということで、戸惑っている方も多いのではないかと思います。
今回は、インターネット接続の仕組みの変化やプロバイダーの変更時に注意する点などをまとめてみたいと思います。
1.インターネット接続の仕組み
現在は、光回線が一般的になっていますが、過去を振り返れば、20数年前にISDN回線から始まり、その後ADSL回線になり、15年くらい前から光回線に変化してきたという歴史があります。
ISDN回線やADSL回線は電話回線を使用したインターネットであるのに対して、光回線は光ファイバーを使ったインターネットであり、同時に電話についても光回線を使用した電話に変化してきました。
一般的に「モデム」という機器がありますが、これは回線の伝送形式の変換に使用される機器で、ISDN回線やADSL回線の場合は、電話線の信号をデジタル信号に変換するものになります。
一方、光回線の場合は、光ファイバーの信号をデジタル信号に変換するものになり、機能的には「モデム」なのですが、光回線の場合は「ONU(回線終端装置)」と呼ばれています。
また、「ルータ」という機器は、外から入ってきたインターネットの信号を、内部のネットワーク内のパソコンに伝えたり、内部のネットワーク内のパソコンからの信号をインターネットに向けて発信するという役目を担っています。
ルータを通すことで、1つのインターネット回線を複数のパソコンで使用できるようになり、とても便利になります。
最近では、ONUとルータの機能が合体した「ホームゲートウェイ」と呼ばれる機器が使われています。
さらに、「ホームゲートウェイ」は、電話回線、無線LAN機能などを持つ複合型の機器になっています。
光回線を契約した場合、ホームゲートウェイはレンタルとなり、月額のレンタル料を払うという仕組みとなっています。
光回線の業者は、たくさんありますが、基本的にはNTTの光回線を基盤として使用していることがほとんどです。
しかし、実際には「〇〇光」という独自の業者がたくさんあって、いかにも私達が光を提供しているといったような顔をしています。
もちろん、ケーブルテレビの提供する光回線はケーブルで提供されており、その点は異なりますが、一般のプロバイダーの提供している「〇〇光」は、NTT回線を借り受けて利用していることがほとんどです。
また、ソフトバンクの「SoftBank Air」や、ポケットWiFiなどは、公共無線を利用した回線であり、上記の光回線とは異なります。
2.フレッツ光と〇〇光の違い
数年前から、突然電話がかかってきて「インターネット料金をまとめるとお得になります」という勧誘が増えました。
フレッツ光というサービスは、回線業者はNTTで、プロバイダーは〇〇というパターンのものです。
そのため、フレッツ光の場合、回線料はNTTに支払い、プロバイダー料は「〇〇」に支払うという別々に支払う形になっています。
ところが、回線料をプロバイダー料に組み込んで、まとめてプロバイダーに料金を支払うと1000円ほど安くなりますという勧誘が全国で行われるようになりました。
その当時、ノコテック・ラボのパソコン教室は、フレッツ光で、プロバイダーはOCNに加入していたのですが、突然電話がかかってきて、こんなふうに言われました。
「お客様のインターネットの支払いをOCNにまとめて1本化すると、料金が1000円ほど安くなりお得です。手続きも簡単で、これまでと何の変化もなく使えます。」
通常はお得になるのであれば、いいのかなあと思い契約する人がほとんどだと思います。
私も同じように考えて支払いをプロバイダーにまとめて支払うように契約をしました。
特に疑うこともなく、光回線のインターネットを使っていたのですが、たまたま今回、プロバイダーを変更することになり、気づいたことがありました。
それは、「フレッツ光でOCNに入っている」とずっと思っていたら、本当は「OCN光」に入っていたということです。
OCNに支払いを1本化した段階で、フレッツ光は解約していたということなのです。
つまり、回線業者もOCNに変わり、プロバイダーもOCNになっていたということなのです。
最近は、電気やガスもまとめませんか?というようなテレビCMも多いのですが、何も変わらず料金が安くなるという言葉に騙されて、契約そのものが変化していることに気づいていないことが多いと思います。
つまり、フレッツ光ではないところの、「〇〇光」というネーミングを持つ場合は、〇〇の業者が回線業者であり、かつプロバイダーであるという意味なのです。
3.「〇〇光」から別の「〇〇光」に変更する場合の注意点
プロバイダーを変更するということは、前のプロバイダーを解約して、次のプロバイダーと契約するということです。この解約と契約の手順はかなり難しくて、2つのプロバイダーに対して正しい手順で連絡する必要があります。
特に、インターネット接続が途切れることがないようにするためには、以下のような手順が必要です。
(1)回線業者を確認する
前のプロバイダーの回線業者と新しいプロバイダーの回線業者が共にNTTである場合は、フレッツ回線ということで変更はありません。
一方、前のプロバイダーの回線業者と新しいプロバイダーの回線業者が異なるような場合は、最初に回線の変更の手続きが必要になります。
この場合、前の回線業者に電話して、「事業者変更承諾番号」を発行してもらい、それを新しい回線業者に伝える必要があります。
契約がフレッツ光であれば、NTT東日本もしくはNTT西日本が回線業者となります。
例えば、契約がフレッツ光ではなく、〇〇光というものであれば、プロバイダー自体が回線業者となります。
(2)新しい回線業者及びプロバイダーとの契約を行う
前のプロバイダーに連絡する前に、新しいプロバイダーに電話をして、契約を行うようにします。
ここで注意することは、現在のプロバイダーを解約する時期です。プロバイダーは月末の解約になりますので、新しいプロバイダーと契約する場合は、少なくとも月の前半である必要があります。
また、回線業者については、インターネット接続を切らさないようにプロバイダーを変更したい場合、前の回線業者に対して、「事業者変更承諾番号」をもらうように依頼されると思います。
(3)前の回線業者に事業者変更承諾番号の発行依頼とIPoEの解除と解約の手続きを行います。
回線業者の変更がある場合は、前の回線業者に対して「事業者変更承諾番号」の発行を依頼します。(電話上ですぐに発行してもらえます)
プロバイダーに対しては、現在の接続タイプがIPoEの場合は、IPoEの解除の申請を行います。(必ず解約申請より前にIPoEの解除申請をするようにしてください)
新しいプロバイダーへの移行は最低でも1週間~2週間はかかりますので、月の前半でこのような手続きをすることが望ましいと思われます。
そして、月末での解約を申請します。
(4)新しい回線業者に「事業者変更承諾番号」を伝えます
回線業者としては、NTT東日本やNTT西日本(フレッツ)の場合と、通常のプロバイダーである場合とがあります。
次の回線業者に「事業者変更承諾番号」を伝えてください。
回線業者の変更は通常1週間以内に行なわれるようです。
(5)新しいプロバイダーから契約書類が送付されてきます
新しいプロバイダーからの書類が送られてきたら、ONUに対してプロバイダーの接続IDと接続パスワードを設定します。
(5-1)ONU機器が変更になる場合
ONU機器が変更になる場合は、入れ替えの工事をする人がやってきます。そして、光回線を新しいONU機器に入れ替え、電話の設定などをしてくれると思います。
新しい機器が設置されたら、プロバイダーから送られてきた契約に書かれた接続IDと接続パスワードをONU機器に設定します。
この方法は、ONU機器の背面にあるLANポートに有線LANケーブルを差し込んで、パソコンのLANポートに差し込みます。
もしくは、パソコンに有線LANポートがない場合は、ONUに無線機能があれば、SSIDと無線のパスワードを入れてONUと接続します。
その後、ブラウザ(Edge、Chrome、Firefox、Safariなど)を起動して、アドレス欄に「192.168.1.1」と入力してEnterキーを押します。
※絶対にIEブラウザは使用しないでください。IEには管理画面は対応していません。
そうすると、まず機器へのログインのためのパスワードを設定する画面が表示されます。すでにパスワードが工事の人によって設定されている場合は、この画面は表示されず、ユーザ名とパスワードでログインするようになります。
ユーザ名とパスワードは重要なので、必ず記録しておいてください。
その後、管理画面でプロバイダーの設定をする画面になりますので、プロバイダーの契約書に書いている接続IDと接続パスワードを設定します。
これで設定は完了です。
(5-2)同じONU機器を使う場合(PPPoEが有効の場合)
現在のONUの機器にログインしてください。
ログイン方法は、ブラウザ(Edge、Chrome、Firefox、Safariなど)を起動して、アドレス欄に「192.168.1.1」と入力してEnterキーを押します。
ログインIDとパスワードを入れて、機器の管理画面に入ります。
※絶対にIEブラウザは使用しないでください。IEには管理画面は対応していません。
基本設定の接続先設定のPPPoEのメインセッションを編集して、新しいプロバイダーの接続IDと接続パスワードを入れてください。
機器を再起動して、機器のPPPランプが点灯すれば接続できていることとなります。
(5-3)同じONU機器を使う場合(PPPoEが無効の場合)
管理画面に入ると、以下のようにPPPoEの設定がグレイアウトして、編集できない状態になっていることがあります。
この場合は、前のプロバイダーのIPoE接続が解除されていない状態です。
この場合、前のプロバイダーに連絡してIPoE接続の解除を要請するか、じっと待つしか方法がありません。
もう1つの手としては、機器の完全リセットを行なう方法があります。
リセットには管理画面からのリセットと、機器自体のリセットボタンからのリセットの2つの方法がありますが、どちらでも大丈夫です。
ONUとパソコンを有線のLANケーブル、もしくは無線LANで接続して、ブラウザ(Edge、Chrome、Firefox、Safariなど)を起動して、アドレス欄に「192.168.1.1」と入力してEnterキーを押します。
※絶対にIEブラウザは使用しないでください。IEには管理画面は対応していません。
完全リセットを行った場合、最初に管理画面へのログインパスワードの設定画面が出てきます。
そこで、新たなログインパスワードを設定してください。
その後、ログイン画面が出ますので、設定したパスワードでログインしてください。
次に新しいプロバイダーの設定画面が現れますので、そこで新しいプロバイダ名と接続ID、接続パスワードを入れて設定ボタンを押してください。
新しいプロバイダーに一時的に接続されて、PPPランプが点灯しますが、数十秒後には、前のプロバイダーのIPoE接続が有効になるため、PPPランプは消灯して、管理画面のPPPoE設定の画面はグレイアウト状態に戻ります。
この状態では、前のプロバイダーとの接続が継続していますが、いずれ前のプロバイダーのIPoE接続が解除された段階で、入力した新しいプロバイダーの接続IDと接続パスワードが有効化され、PPPoE接続に自動で移行しますので問題ありません。
また、新しいプロバイダーがIPoE接続を提供している場合は、上記のPPPoE接続の状態で1日ほど待つと、自動的にIPoE接続が有効化され、自動で設定が終了します。
この状態では、管理画面のPPPoE設定の画面は、再びグレイアウトされますが、新しいプロバイダーに入れ替わっているので問題ありません。
4.PPPoEとIPoEの違いとは?
私自身も久しぶりにプロバイダーを変更したことがキッカケで、PPPoEとIPoEの違いについて初めて勉強しました。
従来からあるインターネット接続形態がPPPoEとなります。自宅や会社にあるONUの機器のLEDを見ていただいて、PPPのLEDが点灯していたら、PPPoE接続ということになります。
一方、インターネット接続は出来ているが、ONUのPPPのLEDが消灯しているような場合は、IPoE接続となります。
新しくプロバイダーに加入した場合、新しいONUのタイプに変更されるケースが多いと思いますが、昔からのONUの場合は、NTTから無料で新しいONUに変更してくれるようなこともあります。
実は、古いONUだと、PPPoEの接続はできるが、IPoEの接続ができないというタイプになっています。
つまり、古いONUの場合は、プロバイダーはIPoE接続に対応しているのに、IPoE接続方式が使えないということになります。
(1)PPPoEとは?
PPPoEは、「PPP over Ethernet」の略で、PPPとは「Point-to-Point Protocol」という略になります。
このPPPというのは、電話回線を使ったインターネット接続方式で、ADSLの時代に普及した方式です。プロバイダーから発行される接続IDと接続パスワードを使ってインターネットに接続する方式です。
このPPPoEの場合、回線業者の持つインターネット終端装置(NTE)を経由することが必須であり、ここでIDとパスワードが認証されてからプロバイダーに接続するという2段階の行程を通る必要があります。
このため、一度に多くのアクセスが回線業者に来ると、NTEでの認証がボトルネックとなって、回線スピードが急激に遅くなるという現象が生じます。
この現象のことを、輻輳(ふくそう)が発生するといいます。
このため、最近はこのような輻輳を生じさせないために新しい接続方式であるIPoE接続に多くのプロバイダーが変更してきています。
(2)IPoEとは?
IPoEとは「IP over Ethernet」の略で、通常のLANと同じような方式でインターネットに接続する方式です。IPoE接続方式では、IPv6と呼ばれるIPアドレスでの接続が基準となりますが、「IPv4 over IPv6」という技術を使って、IPv6の上でIPv4も使用できるようになっています。
IPv4ではIPアドレスを32bitで構成していますが、IPv6では128bitで構成しています。IPv4の場合は約42.9億個のIPアドレスを提供できますが、これでは世界のIPアドレスが枯渇するということで作成されたのがIPv6です。
ちなみに、現在の私のパソコンのローカルのIPアドレスは以下になります。
IPv4 → 192.168.1.4
IPv6 → 2400:4051:5183:ef00:d4ed:ff4a:4c47:998f
IPv6は、すでに多くの機器で採用されていて運用されていますが、このIPv6を標準のIPアドレスとしてネット接続を行っているのが、IPoEになります。
IPoEの場合は、PPPoEのように回線業者側でインターネット終端装置(NTE)を経由して認証を行う必要がありません。直接プロバイダーとONUが接続できるような仕組みになっているので、輻輳(ふくそう)が生じにくく、安定した接続を維持できるようになっています。
このため、IPoEでは多くの人が使う夕方から夜の時間帯でネットスピードが遅くなるといった現象は生じないことになります。
私が体験したことをお話すると、プロバイダーがONUを認識するためには、最初はプロバイダーから提供された接続IDと接続パスワードをONUに設定する必要があります。(この場合、ONU機器をリセットしてから、最初の設定でIDとパスワードを入力します)
そして、前のプロバイダーのIPoEが解除されたと同時に、PPPoEが有効となり、新しいプロバイダー側で認証が行われ、ONUが新しいプロバイダーと接続されます。(この段階で、PPPランプは一時的ですが点灯状態となります)
その後、新しいプロバイダー側でIPoEが自動で有効化され、ONUの設定が自動的に変更されて、IPoE接続に移行していきます。(この段階でPPPランプは消灯することになります)
つまり、現実的にはONU自体をプロバイダーが認識するために、一時的にPPPoEを使用しているということになります。
ただし、一旦PPPoE接続になれば、ONU自体はプロバイダーの支配下に入るので、ユーザー側で接続設定を変更することはできなくなります。
5.プロバイダーの移行で注意すること
今のプロバイダーを変更したいと考えたときは、まずは現在の接続のことをよく知ることがまず一歩です。
・プロバイダーはどこなのか?
・回線業者はどこなのか?
・どういう接続プランに入っているのか?
・インターネットの接続料金はいくら払っているのか?
・電話回線は何本あるのか?
・契約のオプションに入っているのか?
・ONUの管理画面へのログインIDとパスワードは何なのか?
このようなことをまずは認識する必要があります。
でも、契約書類もなく、全くわからないという人も多いと思います。
そういう人は、クレジットカードの明細を見て、どのプロバイダーに入っているかを推測してください。
プロバイダーがわかったら、プロバイダーのサポートに電話して相談するのが一番です。契約内容がわからない場合は、サポートで契約内容の再発行をしてもらうこともできます。
新しいプロバイダーに変更するのは、その次のステップになります。