最近のSTAP細胞を発見した小保方晴子さんへのマスコミ報道を見ると、さんざん持ち上げておいてから、奈落の底に落とすというひどい報道姿勢が感じられてなりません。また、ネット上においてもあることないことがささやかれており、真実を明らかにするという名のもとに、ワイドショー的な「いじめ」が行われているように感じます。
きっかけとなったのは、Natureの論文のとおりに行ってもSTAP細胞を作成することができないという声が大きくなったことと、共同研究者であった山梨大学の若山照彦教授が、一旦論文を取り下げて、再度完璧な形で投稿したほうがいいということをマスコミの前で公表したことです。
若山教授が発言する前に、理化学研究所はSTAP細胞の作成方法についての詳細なプロトコルをPDFでインターネット上に公開しています。
このプロトコルを見ると、以前マスコミが報道していた「簡単に万能細胞がつくれる」と騒いていたのが、全くのデタラメであったことがはっきりします。つまり、小保方さんがSTAP細胞を作れたのは、天才的で職人的な実験能力が小保方さんにあったということに尽きると思います。
そういう意味で今の日本のマスコミには、基礎科学を理解する人材がほとんどいないと思います。
すなわち、小保方さんの技術力なくしてSTAP細胞は生み出せないということです。
この点については、山梨大学の若山教授も、「小保方さんといっしょに作ったときには成功したが、一人で作成したときには一度も成功していない。」と発言をしており、その職人的な技法があることを証明しています。
ここからは少し専門的な話になりますが、プロトコルによれば、STAP細胞の作成には何点かのキーポイントがあるように思いますので、以下にご紹介しておきます。
(1)生後1週間以内のマウスでないと成功する確率はかなり低かった。
(2)組織の細胞をばらばらにする場合は、物理的にばらばらにする場合と、トリプシンとコラゲネースなどの酵素を使用してばらばらにする場合があった。この場合、赤血球が混じるとSTAP細胞の作成を阻害するので、赤血球が混じらないように注意して、スタートとなる細胞を調整した。
(3)スタートとなる細胞は、4℃に冷やされた494マイクロリットルのHBSS溶液(リン酸バッファー系の生理食塩水)にサスペンドされた後、10マイクロリットルの0.16M程度の希塩酸を加えて、pH5.4に調整してから、37℃で25分間、CO2インキュベータ内で処理を行った。この処理により大多数の細胞が死滅するので、程度により処理時間を15分まで縮める方がいいこともあった。
(4)上記の処理された細胞は、1000回転で5分間遠心分離後、酸性の溶液を捨て、(たぶんHBSS溶液で)サスペンドしてから、細胞が吸着しにくい培養プレートに移された。この培養プレートはLIF(Leukemia Inhibitory Factor)と呼ばれる細胞の分化を止める因子とB27と呼ばれる無血清サプリメントが加えられていた。
(5)上記の培養プレートに細胞を移す場合の細胞の濃度が、STAP細胞の作成に影響しており、培養プレートの表面の1平方センチあたり、10の5乗~10の6乗の個数の細胞濃度である必要があった。
このように、STAP細胞を作成する手法は、非常に微妙な操作を必要とするもので、決して誰でもができるものではないことがおわかりになると思います。
プロトコルでは表現できない部分としては、小保方さんが細胞を溶液に溶かす場合のピペッティングなどの手法もあると思うので、他人が簡単にまねできるものではないような気がします。
細胞を取り扱ったことがある研究者ならば、細胞自体がとてもデリケートなもので、ちょっとしたことで死滅する危険性が大きいものであることを理解していると思います。
一方で、小保方さんのコピー疑惑については、弁明のしようがないと思いますが、インターネットが普及した今の世の中ではコピーすることは日常茶飯事に行われていることです。ただ、博士論文において、参考文献の表記をしないままコピーしたことは、小保方さんも反省すべきところだと思いますし、指導教官の教育が問題だった点だと思います。
しかし、一方的なマスコミの報道で、小保方さんが発見したSTAP細胞の芽をつんでしまうことは、日本のみならず世界の生物学研究にとっても、大きなマイナスであると思います。そういう意味で、共同研究者の方や、それに類する研究をされている方は、小保方さんをできるだけ守っていただきたいと願っています。
画期的な研究ほど、なかなか世の中に認められませんが、長期的な視野に立てば、小保方さんが発言していたように100年後くらいに花開いてくるものであってもいいと思うのです。